将来何をすれば良いのかわからないという相談が季節の定番です

春に入学が決まって、サークルにやってくる新入生たちは興奮状態にあります。新卒として就職する青年たちもおそらく同じように軽い興奮状態にあるでしょう。

人生の節目として周囲が祝福し、本人も何かに対する達成感に満ちている時期ですから、ある種の興奮状態にあるのも仕方がないでしょうし、当初受けるプレッシャーに対抗する力ともなります。

残念ながら一定の期間を経てその効力が失われます。興奮状態が冷める梅雨の前後にはみんながウツになりやすい状態になっています。

経験する最初の梅雨は学生にとって環境に慣れてくる時期ですが、疲れのピークであり、初めての試験の季節であり、また湿気が気持ちを押しつぶす時期です。

そのような状態は新入社員にとっても同じで、おそらく時代を通じて同じ経験をしてきたはずです。思い出せば確かにあの頃は…といった記憶が私たちの奥底に横たわっているのではないでしょうか。

自分の状況が静かに落ち着いて見えだしてくると、なんとなくモヤモヤした気持ちになって、将来のことがあれこれと心配になってくるのは生理現象かもしれません。

梅雨の時期になるとこの種の相談が増えます。キャンパスに解説された相談室にも同じような悩みを抱えた学生でいっぱいになるといいます。

定番の相談だからあらかじめ準備しておきたい相談のひとつに違いありません。みんなが経験する気分だからといって油断していると、深刻な事態を招きかねないのは現代的な若者の反応パターンとして注意を必要とします。

将来設計どおりに人生は進まないのが当たり前というのが、私たち経験者が持っている共通の答えでしょう。だからといって、この答えを押し付けても、良い反応は期待できません。

個人的に使用する道具があります。それはコーヒとチョコレートです。この2つは効率よくカフェインを摂取することが可能で、テアニンというリラックス物質が含まれているので、気持ちが疲れた人を穏やかにする効果が高いのです。

学生から相談があれば、近くの喫茶店に入ります。できるだけ落ち着いた喫茶店を選びましょう。そして男性には少し上等なコーヒを選び、女性ならチョコレートケーキを添えます。

喫茶店がありがたいという感覚に気付かされる瞬間です。店員がそれなりに応接してくれますから、相談者をおいたままにして店員と少し世間話をします。そうすることによって、対話のトーンを相談者に提示しているわけです。

さて、彼らの話を聞きながらも私たちはしっかりと焦点を保つ必要があります。つまり彼らの話に流されてしまっては、一緒に疲れた気分を味わうだけの結果に終わってしまうからです。

質問は単純なものです。何をしていてそのように感じたかを明確にしていくだけです。そうすることによってカウンセリングの基本技術を応用します。専門的には、外化といって自分の経験を他人事のように感じるようになる手法です。

将来に対する不安は社会に対するイマジネーションの貧困に起因します。具体的なイメージを作り出せないと、楽しみを予感することもできなくなり、将来は魅力を失い、現在の目標を見失います。

あるいは人間を単純化しすぎて、バリエーションを楽しんで受容できない気持ちになっている場合もあります。あの人もこの人も同じに見えて色彩を失っているのです。

このような相談者は周囲の人間と自分との比較が単純な視点で完結している特徴がありますので、視点の単純さを補うように誘導します。

様々に見える悩みが世代内で共通しているのは、興味深く思いますが、いずれにせよ悩みに振り回されるのは肉体的な疲労が隠されていますので、休息が何よりも大切なのでした。